パンの安売りをやめた神戸屋。
パン流行りである。
青山パン祭りや世田谷パン祭りが開催される。いずれもすごい人が集まり、みんなパンが好きなんだと実感させられる。
でも、日本には古くからパン屋さんを営んでるお店がたくさんある。そのすべてがそんなに賑わっているわけでもないようだ。
世田谷の自宅の近くに神戸屋レストランがある。
神戸屋との出会いは、広尾の交差点角にあるお店によく行っていた頃、今から20年以上前になる。
バターたっぷりのクロワッサンと季節のフルーツをたっぷり使ったデニッシュなどが時々無性に食べたくなると、ここに寄った。
今ほどブーランジェリーとか個性的なパン屋さんのない時代で、そこそこ美味しいパンがリーズナブルなプライスで買うことができたので、神戸屋は定期的に立ち寄るパン屋さんだった。
最近では渋谷駅や恵比寿駅の中でイートインスタイルのお店も出し、世田谷では洋食の郊外型レストランとして週末のファミリー層に人気で、大きな店が数軒ある。
世田谷の神戸屋がある時から閉店前のタイムセールを始めた。
世田谷の自宅近くに大きな神戸屋レストランがある。洋食の食事をすることはあまりないが、夜遅くまで営業しているので、明日の朝のパンがないな、という時には閉店前に買うことができたので助かっていた。
それが、去年頃から閉店前にタイムセールを始めるようになった。大きなネオンサインを持って幹線道路沿いにスタッフが立つ。そのサインを見てクルマのお客さんが来店することはほとんどないだろうが、近所の住人の間では話題になっていた。閉店ギリギリだと50%OFFまで値引く。300円のクロワッサンが半額の150円で買えるので、ご近所の人はわざわざ閉店間際に来店して買っていた。私も明朝のパンを買おうと立ち寄ると、レジの行列によく並ばされた。
それは半額で買えるのはとても嬉しい。子どもたちに翌日の朝、おいしいパンを食べさせてあげられとしたらこんな幸せなことはない。レストラン併設店舗なので、テイクアウト用のデリ、ハンバーグやビーフシチュー、サンドイッチなども半額、なんとケーキなども半額だから、ついつい買いすぎてしまう、そんなこともあった。
その人気のタイムセール最近やめた。
先日の夜、いつものように神戸屋に立ち寄ったら、店内は静かなので「あれっ?」と思ったら半額セールのサインもない。
制服姿のマネージャーに聞いてみた。
「タイムセールにもお客様がたくさん来るので、パンがないと申し訳なく、パンをたくさん用意することになっていたんですよ」とのこと。
一方で、大切な神戸屋のパンを半額で売るのかという意見もあったそうだ。で、結局は「やめることにしました」と。
私も「安売りはやめた方がいいよ」と本音の意見を言ったが、神戸屋はこの経験からは何を学んだのだろうか。
これからしばらく夜の客足はガタッと落ちることは間違いない。でも、それが正しい判断だったかどうか、その答えは1年先にならないと分からないだろう。でも、お客さんは正直なもので、別に神戸屋が好きで買ってたわけでもなく、半額で買えたから買っていただけで、という結論になりそうな気もする。が、これに負けずに頑張ってほしいものである。
娘の友だちがDEAN & DELUCAで働いている。
このお店は余った商品の管理がとても厳しいという。それには、こんな背景があったらしい。
あるお店で閉店後、店内でパンを食べる姿を表から通りすがりのお客さまが見て、会社に電話をしたという。
「お宅は余った商品をスタッフが閉店後に食べるのか?」と。
以来、会社方針として絶対に店内で食べないように、余った商品は口にしないように。
ま、当たり前といえば当たり前だが、これだけフードロスを問われている日本。大手のみならず、余るほど商品を作って処分することを繰り返すのはどうなんだろう。この課題は食に関わる事業を行っている人、全員の課題だと思う。
追記。
このブログを書いた数日後の夜11時頃。
自宅に帰る時に、まだ神戸屋のお店の前で「30%OFF」のパネルを若いスタッフが持って立っていた。11時だというのに。
つい先日、もうやめました、と言っていたのに、また安売りをしていた。
やはり安売りに勝るプロモーションはないのか。まだ月初めだというのに安売りを復活せざるを得ない、そんなに厳しい状況なのか、神戸屋は。
右往左往するパン屋さんを、これからも見続けていきたい。