Tokyo Culture

もしも、ピアノが弾ければ。

そう思ったことは何度もあった。

ピアノを聴くようになったのは、ビル・エヴァンスのピアノトリオを聴くようになったのが、最初だったかもしれない。ロックばかり聴いていた学生時代から社会人になって、大人になったらジャズくらい聴かなくてはとなんとなく背伸びをして思うようになり、ブルーノートの名盤を聴き始めた。折しも青山の骨董通りにブルーノート東京がオープンし、手が触れるくらい近いステージに巨漢のオスカーピーターソンの迫力のピアノを聴いたりする機会にも恵まれた。

ビル・エヴァンス

でも、好きだったのはビル・エヴァンスのピアノトリオだった。実際に彼のステージを観ることはできなかったが、コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルのライブアルバムはカフェの食器の音なんかも聞こえて、最高の1枚だった。ちょっとうつむき加減のモノクロームジャケット写真も、オールバックのヘアスタイル、黒縁メガネもいかしてた。

以来、ピアノを聴くのはもっぱらジャズばかりで、日本の名ピアニスト、内田光子や中村紘子のアルバムも持ってはいたが、クラシックにはなかなか馴染めなかった。ジョン・ルイスのバッハはジャズとクラシックの融合のせいか、あるいはバッハのプレリュードが聴きやすいせいか、BGMとしてはよく聴いた。

蜜蜂と遠雷。

2016年、恩田 陸の「蜜蜂と遠雷」という小説が出た。分厚い本だったが、書店でこの本のタイトルを見て「何だろうこの小説は」と思い、買ってみたら一気に読んでしまった。小説を読みながら音楽のメロディー、しかもピアノの音が聴こえてくるのは初めての体験だった。それだけ音楽、ピアノの演奏の表現がうまく書けた小説だった。映画化され、つい最近この映画を観ることができた。主演の松岡茉優も可愛かった。

ショパン

そして、昨年の暮れ、あのショパンコンクールのニュースが飛び込んできた。反田さんと小林さんのダブル受賞というビッグニュースだった。と言っても、私は特にショパンコンクールのことに詳しいわけではないが、内田さんや中村さんが受賞していることは知っていたので、すごいなと。それと、彼ら二人の印象がすごくよかった。天才少女と呼ばれた小林さんは蜜蜂と遠雷の主人公に近い感じもあったし、音楽学校を作るという明確な目標を持っている反田さんはそのために名声が欲しかったという戦略が成功したというのもすごかった。

で、お正月に手に入れたBOSEのノイズキャンセリングイヤホンで、もっぱらショパンの二人のアルバムを聴いてる。こんなにショパンやクラッシックを聴くのは初めのことで、最近新しい何かがない、ロックやポピュラーの音楽よりもいいかもしれないと思い始めた。ロックはもっぱらアップルミュージックのサブスクで聴いているが、私の好きなロックのカテゴリーが「クラシックロック」となっているのも笑えるけど、この歳になると、かつて聴いていたロックもショパンもクラシックかということ。ま、それもいいかも。

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