盲目の国学者、塙保己一の史料館で見た版木
昨日はあまりに天気がよかったので、渋谷の事務所近くを散歩していたらいつも何気なく通る通りにある「塙保己一史料館」がふと目に留まり入ってみた。すると、何と江戸時代に作られた版木を見学することができた。塙保己一は江戸時代の盲目の国学者で、生涯をかけて「群書類従」を編纂したことで歴史に名を残した。盲目にも関わらずであるから、今どきの詐欺師の音楽家とは異なり、昔の人は本当にすごかったと改めて感じ入る。大学受験時に日本史を選択していたので、塙保己一の名前も群書類従の名も記憶にあったが、詳しい内容までは覚えていなかった。その詳細は史料館のホームページにあるのでそちらに譲るが、私が驚いたのは館に入ってすぐの部屋に版木と呼ばれる木の版が江戸時代のまま保存されていた。館の方が案内して見せてくれたが、木は桜の木で保存状態もとてもよく、今でも複製を作るときには印刷しているという。ここにある版は群書類従のものの他、徒然草や元暦万葉集などの版木もあるという。子供の頃、彫刻刀を使って版画を作る時、絵も文字も反対(鏡面)に掘ったが、まさに草書体の文字を鏡面で掘ってある。保存されている部屋は鍵もなく温度や湿度を一定に管理することもなく、自然のままなので、材に使われている桜の木は本当に強いんだと感心。私の事務所で使っているテーブルや椅子もブラックチェリーで桜の一種。もともと家具には人気の材なので、一生使えるというのも本当なのだと納得した。
先日、友人の知り合いに銀座で活版印刷を営んでいる方がいるという話を聞いた数日後、写真家の小川さんが活版印刷で名刺を作ったと聞き、早速一枚いただいた。最近若い人の間でも活版印刷の名刺やカード印刷のワークショップなども開催されていたので、伝統工芸のような技を守るために我々も少しでもお役に立てればと、今度は自分の名刺を作ろうと思っていた。が、江戸時代の版木まできれいに残されているとは、さすがに東京。でも、ほとんど見逃されているんだろうな、公益社団法人とは言え、お客さんが入っているとは感じられなかった。来月は初めての般若心経という講座と写経体験があるというので、初めての写経に挑戦してみよう。
塙保己一史料館のホームページはこちら。