Tokyo Culture

書籍の流通について、忘備録的に記しておきます。

昨年の9月にスイッチ・パブリッシングから村上春樹の新刊「職業としての小説家」が出版され、紀伊國屋書店が9割を買い取り、全国の書店に配本するという取り組みで話題になった。
私もちょうど1年前に自費出版して、取次店を通さずに書店へ「直取引」で卸させていただいているが、この取次と配本の変わらない現状をまとめておく。
朝日新聞1月20日のインタビューで、スイッチ・パブリッシングの新井社長が取材に答えた記事の中からの抜粋です。

一般的に新刊書は出版社から取次店を経て書店に配本される。
取次に卸す際に出版社の取り分となる「正味」と呼ばれる掛率は、出版社によって異なる。
さらに中小出版社は「歩戻し」と呼ばれる配本手数料をとられる。
スイッチ・パブリッシングの場合は、正味が67%で歩戻しは5%。
本体価格1,800円の62%(1,116円)が取り分となる。消費税は別計算。
しかも、返本されるとその本にまで歩戻しはかかってくる。
さらに、入金は7ヶ月先となる。

出版社の規模、取扱高の大小、歴史、書籍の単価などによって掛率も歩戻しも変わっているが、中小出版社にとっては資金繰りも含めて厳しい条件であることは間違いない。
この制度自体が古くからの慣行で、制度疲労を起こしているとも言われているが、なかなか変わることもないまま時代は代わり、Amazonが販売する書籍の量は今では市場全体の10%くらいになっているという。
私も現在Amazonで販売をしているが、卸価格は65%で納品送料はすべてこちら負担。1冊単位での納入依頼が多く、1冊あたりに占める発送料が300円くらいにつきそうだ。しかし、入金サイトは月末締めの翌々末なので、2ヶ月でキャッシュが手元に入るのは助かる。

それにしても書籍が売れないと言うが、テレビも見なくなり、本も読まなくなっている傾向はたしかにそうだろう。でも、なくなるわけではなく、必要なものは必要だ。つまり、どうでもいいものはなくなり、必要とされるものは買われるという当たり前の市場構造に変わってきていることでしかない。
先日お会いしたCMディレクターも写真集を自費で出版し、自ら書店に営業して歩いてい300部は売ったという。小商いの典型でもあり、ZINEの延長のようなスタイルが普通になってきている。
いずれにしても大量生産の時代ではないというこだ。

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