出汁をひく野菜料理、潤菜どうしん。
まだ若いのでしっかりした出汁を使った野菜懐石料理をいただけるのが、「潤菜(るさい)どうしん」という新富町にあるお店。10人も入ればいっぱいになる手狭な店内なのは、料理人一人で無理せずできるだけのお客様をもてなすという意図が明確に感じられる。もちろん予約が必要になる。昼も夜も変わらずコースメニューだけなのも、よくよく考えてみれば無理せず作りたての料理、鮮度のある料理でもてなすということにほかならない。予約制というと何だか敷居が高いような気もするが、フレンチなどは基本的に予約してから伺うのがエチケットでもあるし、いきなり訪れて美味しいものを食べさせてくださいと言っても、逆の立場だったらそりゃ無理だということになる。自宅で夕食をする人も、奥さんに今夜は食べるの食べないの?と帰るコールをするのは当たり前、「だって準備するんでしょ」というのと同じことなんだと分かる。いつの間にか、スタンドかファーストフードのようにいつでも立ち寄れば数あるメニューから好きなモノをオーダーして食べるようになって日本の外食スタイルは、もう無理があるんじゃないかなと思いが至る。30品目あればそれだけの食材をストックする必要があるし、必ずしも全部出るわけでもない。結局余った食材は廃棄することにもならざるを得ない。これはお客様は神様です信仰による歪んだスタイルなんだと思う。以前青山にあった「GOKAKU」という野菜料理のお店は「正」という文字が5角という意味から名づけたらしいが、ここもプレフィックスメニューというスタイルをいち早く取り入れていた。残念ながら数年前にお店をたたんでしまったのだが、あれだけ支持されていたお店でも閉店せざるを得ないのが東京の市場である。
「潤菜(るさい)どうしん」は自らの力量をわきまえているというか、無理していないというのが感じられる。できるものをできる範囲で。そんな潔さがあるので、メニューで迷うこともなく、席についたらその時々のコースをお願いして、主人の手によるお料理をいただくだけである。
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