マツダデザイン。新型ロードスター発表。
先日、渋谷の駅を歩いていると、連貼りポスターが目に入った。
クルマのポスターだが、クルマの全体スタイルの写真がない。
キャッチコピーは、マツダデザイン。
1989年に誕生したユーノス。
この時、マツダは日産に追いつけとそれまで2チャンネルだった販売会社の系列を一気に5チャンネルへ増やした。
当時の社長は住友銀行から来たバンカーだった。机上の論理で、販売系列を倍にすればクルマも倍売れるだろうという論理だった。
まだ30代そこそこだった私でも、「えっ、本当にそんなことするの?」と感じたくらいインパクトのある事業拡大だった。
当時のマツダは住友銀行の支配下で、経営再建の真只中だった。ロータリーエンジンが売れず、燃費のいいクルマや排ガス規制の影響で売れるクルマがなかった。
それにも関わらずクルマのことを知らないバンカー社長は、そんな乱暴なステアリングをぐいっと切った。
マツダ系、オート系というのがそれまでの販売会社で、そこにアンフィニ、ユーノス、オートザムという新たな系列を一気に増やして、販売台数を倍増させようという狙いで、私もユーノスの立ち上げに関わらせていただくことになった。
ユーノスと言っても売るクルマがない。最初に出たのが13Bロータリーエンジン搭載の新デザイン、ユーノスコスモだった。デザインはとてもきれいだった。でも、デザイン優先のエンジンルームの熱処理ができずに、ボンネットで目玉焼きができると揶揄された。それと、国産車で初めてカーナビをメーカーオプションで搭載したと記憶している。試乗車に乗って都内を走ると、橋のない川を渡ったり、東京湾を走ったり、SFのようなナビゲーションだった。
アンフィニに至っては、マツダで販売しているセダンのボディだけ着せ替えて、価格を高くして売るという始末。それで売れるわけもなく、アンフィニはもっとも存在感のない高級ブランドだった。オートザムは軽に特化したチャンネルで、スズキからOEMを受けたクルマの中で、キャロルという懐かしい名前で新しいデザインのクルマがヒットした。ミスタードーナッツとタイアップして、店頭でキャロルのガラスの瓶(ビンビンキャロルという名前だった)をプレゼントした。これは今でこそ普通に行われているコラボの始まりで、クルマ屋とドーナッツ店という異業種タイアップの走りとなった。
そして1989年9月。ユーノスロードスターがデビューした。
私自身も赤坂プリンスホテルで開催された予約会に並んで、ボディナンバー500番台のシルバーグレイのユーノスを予約した。1600ccDOHCのユーノスの最大の魅力は1トンない車重の軽さだった。まさにライトウェイトスポーツだった。その後のロードスターは売れるということで欲を出し、高級化へとデザインを退化させ、なぜか3ナンバーになったりしていたので、魅力は感じなくなってしまった。でも、25年経ってもまだ生産し続け、今度の新型は1トンない車重になるらしい。
最近のマツダはスカイアクティブという新しいエンジンの技術も共通おフロントグリルのデザインも含めて、たしかによくなってきている。どのメーカーもハイブリッドに走り、色浴のないクルマが多い中で、まだエモーショナルなクルマのニオイは残っている、貴重なメーカーかもしれない。新しいロードスター、ちょっと見てみたい。