Out of Tokyo

初めての滋賀県、近江八幡へ、日牟禮たねや舎へ。

日本各地に残る八幡という地名。
2月中旬、近江八幡へ行った。
名古屋と京都の間、琵琶湖の東岸にある北国街道沿いの長浜や近江八幡のあたりにはまだ行ったことがなかった。新幹線で関西方面に行く際はどうしても通過点でしかないのがこのエリア。東京からのアクセスは名古屋でこだまに乗り換え、米原で在来線にと2回の乗り換えがあるので、なかなかぶらりと立ち寄ることもない。おそらく新幹線開通の際には観光地として駅が欲しかったのだろうと推測されるが、琵琶湖東岸の長浜、彦根、近江八幡へのアクセスは米原からということになる。

八幡という地名は関東にもいくつかある。有名なところでは鎌倉の鶴岡八幡宮。千葉県市原市の本八幡(これは「やわた」)。京王線にも八幡山。そう言えば事務所の近くには金王八幡宮がある。八幡平は秋田県。おそらく全国各地にある氷川神社と同じように八幡という氏神様の神社があったのだろう。何の予備知識も持たずに近江八幡駅に降り立ち、さてどうしようかと駅前のタクシーの運転手さんに相談すると、近江八幡神社まで歩くのは大変だからどうぞと言われ、案内していただく間にいろいろお話を聞いて、結局5,000円ほどで数時間の観光ミニドライブをお願いした。聞くと、この町には流しのタクシーはおらず、電話で呼ばないと乗れないという。だったらそのままドライブをということでお願いした。タクシー会社はその名も近江タクシー。地元独占なのかもしれない。

本町通りの旧商家の町並み。

日牟禮八幡宮のたねや本店へ。
我々東京の人間にとって近江八幡と言えばやっぱり「たねや」。和菓子のたねやとバームクーヘンの「クラブハリエ」が有名。ここ数年デパ地下でも虎屋よりたねやの方が人気みたいで、私もよくお茶や手土産用のお菓子やバームクーヘンは利用させてもらっている。近江八幡にある神社は日牟禮(ひむれ)八幡宮といい、その参道の左右に和と洋のたねやが鎮座している。日牟禮ビレッジと呼ばれ、まさにたねやの存在感を示す神がかり的な演出で、これには恐れ入りましたという感じ。というか、民間企業に表参道を開放するなんてことが許されるのかという気もするが、タクシーの運転手さんに聞くと、たねや創業家に嫁いだ奥さんがやり手で、この話しを八幡宮に取り付けたという。別の地域の神社からの嫁入りで、神社にコネがあったということのようだ。これをきっかけにたねやは急成長を遂げ、一気に東京にも進出。その際に資金手当も含めたサポートをした地元信金の当時の担当者の方にもひょんなことからお会いすることになり、お話も聞けた。

たねや日牟禮の舎。

本店限定販売の栗羊羹

近江商人の町。
もともと近江八幡は近江商人の出身地として有名。高島屋、丸紅、伊藤忠、西川産業などなど、たくさんの起業家が誕生している。もともと秀吉の甥にあたる豊臣秀次が築いた近江城の城下町として栄えたのが始まりで、今でも旧商人の家の町並みが保存されている本町通りは、歴史ドラマや映画の撮影にもよく使われている。また、近江八幡が琵琶湖の東側湖畔に位置する町で古くから琵琶湖水運の要衝として栄えた名残りで、今でも夏には八幡掘を観光船が行き来する。白壁土蔵や旧家が建ち並ぶ中を船で巡る様は和風ベニスの町のような雰囲気かもしれない。

八幡掘。

ヴォーリズの西洋建築。
この町にはもうひとつ建築マニアには嬉しい建築物がたくさん残る。明治末期にアメリカから英語の教師として来日したウィリアムズ・メレル・ヴォーリズが残した西洋建築だ。建築家でありながら日本にメンソレータムを普及させ、医療、教育、出版などの事業も成功させたた実業家でもある。現在残るのは旧ヴォーリズ邸のヴォーリズ記念館(一柳記念館)、旧八幡病院、ヴォーリズ記念病院、ハイド記念館、アンドリュース記念館などなど。古い日本の町並みの中に残されている西洋建築を見て回るだけでも価値がある。

ヴォーリズ記念病院。

彦根藩と世田谷豪徳寺の繋がり。
すぐ近くには織田信長の安土城址もあり、北国街道を北へ上れば井伊直弼の井伊彦根藩の町、彦根が栄え、そして長浜と続く。世田谷には彦根藩菩提寺として井伊家の墓が残されている豪徳寺がある。先週末、春の彼岸の一日、たまたま豪徳寺を訪れ、井伊家の墓にお参りしてきた。長浜にはギャラリー西川という古美術、特に古伊万里が豊富なお店の本店があるので、一度は訪れてみたいと長年思っていた町。ギャラリー西川は麻布十番にお店があり、夏祭りの時にセールを毎年行っているので、いつも掘り出しの古伊万里を求めていた。もうすぐ桜の季節であり、八幡堀川には水しょうぶの花も咲き、一年でもっとも美しいシーズンを迎える。初夏の頃、もう一度ゆっくり訪れてみたい町だ。その時は近江牛を忘れずに。

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