代官山、ヒルサイドテラスのサンドイッチ、トムズ・サンド。
最近、代官山と言えばTサイトばかりだが、昔からあるヒルサイドテラスも好きだ。中でもサンドイッチの専門店、トムズ・サンドは何十年も前に編集者やスタイリストの先輩達に連れて来られたお店。好きなのは一番奥のテーブル席で、大きな窓の外には代官山とは思えないほど贅沢な緑が広がる。大きなテーブルの片隅で緑を見ながらボーっとするひと時がたまらなく贅沢なひと時だった。
ヒルサイドテラスはその名の通り、丘の上にある。もともとは南側に隣接する朝倉邸の敷地だったようだ。その丘の上を1960年代から時間をかけて開発が進められてきた。完成まで何と30年もの時間を費やしているという。総合設計監修は建築家の槇文彦氏。山手通りという幹線道路に面しながらも低層に抑えられ、広い面に穏やかに広がるそのプレゼンスは、商業施設としてだけではなく、文化の発信も含め、我々が憧れる代官山の象徴だった。
もうひとつ、クリスマスカンパニーというお店がある。ハニーというお菓子の製造販売会社のクリスマス専門店。1年でたった1日のクリスマスの日のために、1年中クリスマスを扱っているという覚悟のあるお店で、見たことのないドイツのオーナメントなどを発見するたびに心が満たされ、子どもたちのためだけではなく自分たちのクリスマスに買っていた。マツダという自動車メーカーとのタイアップキャンペーンも数年に渡って行い、原宿表参道と大阪御堂筋にあるマツダのショウルームをクリスマス一色にデコレーションした、とても楽しい仕事だった思い出がある。この時にハニーのデザイナーだったのが今でもお付き合いしている友枝くんだ。彼はいち早く会社を辞し、八ヶ岳に移住。今では八ヶ岳ライフの案内人としてとてもダイナミックな暮らしをエンジョイしている。
今でも時々旧山手通りを歩く。Tサイトが圧倒的に集客力は高いが、通りの西側のヒルサイドテラスからカフェ・ミケランジェロのあたりの風景は30年前と何ら変わっていない。都心にもかかわらず豊かな緑とゆったりとした時間の流れを感じさせてくれる、そんな代官山もいい。